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食品衛生法の改正に伴って、2020年6月から食品用器具や容器包装に関するポジティブリスト制度が導入されました。(※)すでに動き始めている制度ですが「ポジティブリスト制度とは何だろう?」「ネガティブリスト制度との違いがわからない」「経過措置で何をすればいい?」と悩んでいる方もいることでしょう。
そこで本記事では、ポジティブリスト制度の目的やネガティブリスト制度との違い、合成樹脂を含む対象となる物質などについてわかりやすく解説します。また、ポジティブリスト制度施行に伴い、切替が必要となる食品製造現場の軸受についても紹介しています。
※弊社樹脂製品におけるポジティブリスト制度への適合情報については「食品衛生法改正に伴うポジティブリスト制度への適合情報について」のページにて詳しく解説しております。
ポジティブリスト制度に対応したすべり軸受※に関するご相談はオイレス工業へお問い合わせください。
※すべり軸受については下記記事で詳しく解説しています。
1. 食品衛生法改正によるポジティブリスト制度の導入について

そもそも、ポジティブリストとはどういった制度なのか。対として比較される従来のネガティブリスト制度と併せて見ていきましょう。
ポジティブリスト制度とは
ポジティブリスト制度とは、食品のより厳密な安全性の確保を目指した制度です。
本制度ではこれまで、一定量以上の農薬(動物用医薬品・飼料添加物を含む)が残留する食品の販売を規制してきましたが、2018年6月13日に公布された改正食品衛生法に基づき、2020年6月1日から食品用器具や容器包装に使用される合成樹脂を対象にしたポジティブリスト制度が施行されました。
これにより、ポジティブリストに無い物質を原材料とした食品用器具や容器包装の使用が原則禁止となりました。
※器具とは、食品衛生法第4条において、次の通り定義されています。
器具
飲食器、割ぽう具、その他食品または添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列、授受又は摂取の用に供され、かつ、食品又は添加物に直接接触する機械、器具、その他の物をいう。
(例) コップ、スプーン、箸、包丁、製造機械類など
残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)【2003年5月29日施行】 | 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度【2020年6月1日施行】 |
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ポジティブリスト制度とネガティブリスト制度の違い

ポジティブリスト制度とネガティブリスト制度では、物質の規制方法が大きく異なります。
ネガティブリスト制度とは、原則規制がない状態で、リストに記載された物質のみ規制の対象とするものです。そのため、リストに記載のない物質については、食品への残留が検出されても流通を規制できないことがありました。
一方、ポジティブリスト制度では、リストに記載のある物質のみ許可され、それ以外のリストに載っていない物質は全て原則禁止の対象となります。また、許可された物質については、使用量や溶出量もリスト化されています。
ポジティブリスト制度はネガティブリスト制度ほどの自由度はありませんが、安全性が確認された物質のみ使用を許可されることにより、食の安全が確保しやすくなるといえるでしょう。
2. ポジティブリスト制度導入の目的

食品の安全性は常に社会の関心事であり、消費者の健康を守るためには確実な規制が必要です。ポジティブリスト制度は、このような背景のもと、食品中の有害物質を厳格に管理し、安全性を高める目的で導入されました。
ここでは、ポジティブリスト制度導入の理由と背景について確認していきます。
食品の安全性確保
ポジティブリスト制度が導入された主な理由のひとつは、従来のネガティブリスト制度ではリストにない物質が使用可能であったため、食品の安全性確保に限界があったことです。ポジティブリスト制度では、使用を認められた物質のみをリスト化し、厳格な基準に基づいて管理することで、より確実な食品の安全性を確保しています。
国際的な食品安全基準との整合
この制度の導入には、国際的な食品安全基準との整合性を図る目的もあります。例えば、「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」の残留基準は、国際基準であるコーデックス基準などをもとに設定されています。
また、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度は、「食品用器具や容器包装の安全性を確保し、国際的な規制との整合性を図る」ために導入されました。実際、多くの欧米諸国ではすでにこの制度が導入されており、日本も国際基準に対応するために導入に至りました。
ポジティブリスト制度の導入は、消費者の健康リスクを最小限に抑えるだけでなく、国際基準との整合性を確保し、海外への輸出促進にも寄与しています。
3. ポジティブリスト制度導入によるメリット

ポジティブリスト制度導入によるメリットについて解説します。
品質と安全性の向上
ポジティブリスト制度は、消費者に提供される食品の品質や安全性を大幅に向上させるため、食品業界全体の信頼性アップに貢献します。
例えば、2003年の食品衛生法の改正による「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」が施行される以前は、残留基準の定められていない農薬が食品から検出されても販売禁止にすることができませんでした。しかし、ポジティブリスト制度導入により、残留基準もしくは一律基準を超える残留農薬が検出された場合だけでなく、リストに登録されていない農薬が一律基準以上残留している場合も、規制の対象とすることができるようになりました。
現在のポジティブリスト制度は、農薬や飼料添加物、動物用医薬品、そして食品用器具や容器包装に使用される合成樹脂が対象となっていますが、将来的には紙や金属なども対象とするか検討されています。
開発体制と工程管理の効率化
ポジティブリスト制度により、安全性が確認された物質のみが使用許可されるため、製品開発や工程管理が効率化されます。事前にスクリーニングされた材料を使用することで、開発プロセスの無駄を省くことができます。
グローバル市場への対応力強化
ポジティブリスト制度は、国際的な食品安全基準との整合を確保することも目指しています。
例えば、「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」では、科学的評価により設定される国際基準などを参考に、国際的に広く使用されている農薬などに残留基準を設定しています。また、一律基準に関しても、国際評価機関で評価された農薬の許容量などと国民の食品摂取量に基づき0.01ppmが設定されました。
また、食品用器具・容器包装のポジティブリストは米国や欧州(EU)、イスラエル、インド、中国、インドネシア、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、サウジアラビアなど、すでに多くの国々で採用されています。
本制度の導入により、輸出時の規制対応が円滑になり、国際取引における信頼性の向上が期待できます。
4. ポジティブリスト制度が導入された主な対象物質

ここでは「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」と「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」における対象物質についてそれぞれ紹介します。
「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」における対象物質【2003年5月29日施行】
「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」は、生鮮食品や加工食品を含むすべての食品に対して適用されます。これにより、食品中に残留する農薬や動物用医薬品等について厳格な規制が実施され、基準を超える残留物質を含む食品の流通が禁止されます。すべての食品が対象となるため、消費者は安全な食品を購入できるという安心感が得られます。
「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」における対象物質は以下の通りです。
①農薬
農薬については、「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」により、残留基準が設定されていない農薬等を含む食品に対して、一律基準として0.01ppmが適用されます。これにより、基準値を超える農薬が残留した食品の販売は原則として禁止されます。この規制は、農薬の使用が多い農産物に特に重要であり、食品の安全性を確保するための強力な手段となっています。
②飼料添加物・動物用医薬品
飼料添加物や動物用医薬品も「残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)」の対象となっており、これらの物質が食品に残留する場合、リストに掲載されている物質のみが使用を許可されます。ただし、人の健康を損なわないと明確に判断される物質については、規制の対象外となる場合もあります。この規制により、畜産物の安全性がさらに強化され、消費者に対する健康リスクが低減されます。
「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」における対象物質【2020年6月1日施行】
「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」の対象となる合成樹脂はその特性から、食品製造現場で広範囲に渡って使用されている材質です。
例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)は、とても軽く、成形性の高さにくわえ、無味無臭無毒であるため、食品包装フィルムや保存容器に広く利用されています。また、ポリカーボネート(PC)は、耐衝撃性に優れているため、食品加工機械のカバーや部品として使用され、過酷な製造環境でも高い耐久性を発揮します。
さらに、エポキシ樹脂は、高温下でも安定した性能を保ち、食品製造ラインの耐熱部品やコーティングに使用されます。
このように、合成樹脂は食品製造プロセスを支える重要な役割を担っているため、安全が担保された材料が使用されていることが重要です。ポジティブリスト制度により厳格に管理されることで、消費者は安心して食品を購入することができます。
ここからは、2020年6月1日から施行されている「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」について詳しくみていきます。
5. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の対象となる合成樹脂製品の具体例とは?

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の対象となる合成樹脂には、以下のようなものがあります。
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン-1(PB-1)、ブタジエン樹脂(BDR)、エチレン・テトラシクロドデセン・コポリマー(ETD)、エチレン・2-ノルボルネン樹脂(ENB)、ポリスチレン(PS)、AS 樹脂(AS)、ABS 樹脂(ABS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ふっ素樹脂(FR)、ポリメタクリルスチレン(MS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ナイロン(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリルサルホン(PASF)、ポリアリレート(PAR)、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル(HBP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステルカーボネート(PPC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)
引用:ポリオレフィン等衛生協議会、塩ビ食品衛生協議会、塩化ビニリデン衛生協議会ポジティブリスト(概要)より一部抜粋
上記の合成樹脂を用いた食品用器具や容器包装について紹介します。
食品包装フィルム
食品を包むラップフィルムや冷凍食品の包装材には、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が使用されています。これらの熱可塑性プラスチックは、加工しやすく扱いやすいので、キッチン用品をはじめ包装用など様々なシーンで用いられています。
ペットボトル
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、軽量で強度が高いのが特徴です。飲料用ペットボトルの主要な材料として広く使用され、直接口にする機会も多いため、特に高い安全性が求められます。
食品保存容器
家庭でよく使用される食品保存容器には、ポリプロピレン(PP)やポリカーボネート(PC)が使用されています。これらの容器は冷蔵・冷凍環境にも耐えることができ、長期間の食品保存に用いられる場合が多いため、本制度で厳格に取り締まられています。
使い捨て食器
使い捨てのカップやスプーン、フォークなどには、ポリスチレン(PS)が一般的に使用されています。軽量で安価なため、大量に用いられている製品です。これらも直接口にする機会が多いため、安全性の確保が重要です。
缶詰の内側コーティング
缶詰の内側に使用されるエポキシ樹脂やポリエステルコーティングは、食品が金属に直接触れるのを防ぎ、腐食を防ぐ役割を果たします。これらのコーティング材も、ポジティブリスト制度で安全性が厳しく管理されています。
その他の合成樹脂製品
その他、熱硬化性プラスチック(例:メラミン樹脂、フェノール樹脂)や、熱可塑性エラストマー(例:ポリスチレンエラストマー、スチレン・ブロック共重合体)など、食品用器具や容器包装に使用されるさまざまな材料も、ポジティブリスト制度の対象となっています。
6. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の対象外となる物質

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度では、食品用器具や容器包装に使用される材料の安全性が厳しく管理されていますが、すべての物質がこのリストに含まれるわけではありません。ここでは対象外となる物質を説明します。
まず、合成樹脂に含まれないゴム(例:ブタジエンゴム、ニトリルゴム)のような熱可塑性を持たない弾性体は、ポジティブリストの対象外です。また、金属などの無機物や紙、木といった天然物由来の器具や容器包装も、基本的にはリストの対象とはなりません。ただし、牛乳パックのような紙容器や金属缶のように、表面に合成樹脂のラミネート加工が施されている場合は、ポジティブリストの規制対象に含まれます。
以下の表はポジティブリストの対象外となるものの一例です。
分類 | 物質例 |
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金属 | 鉄、銅、アルミ |
非金属 | ケイ酸塩、炭酸塩等 |
未精製の無機物 | 岩石、土、砂 |
未精製の天然物 | 植物、抽出物 |
天然高分子物質 | 植物繊維 |
合成有機高分子物質(固体) | ポリマー(ゴム) |
引用:ポジティブリストの対象について - 消費者庁より一部抜粋
原材料に含まれる物質が化学的に変化して生成された物質や、食品に直接接触しない部分に使用された印刷インキや接着剤などで、0.01mg/kg食品を超えて溶出・浸出しない物質も対象外です。
現在の食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度では合成樹脂を対象としていますが、それ以外の材質に関しても、今後規制範囲が拡張される可能性があります。ポジティブリスト制度は、時勢に応じて随時更新される可能性が高いため、最新の情報を常に把握しておくことが重要です。
7. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度への対応

本項では、ポジティブリスト制度への適合性の説明義務と経過措置について解説します。
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度への適合性の説明義務とは?
改正食品衛生法第50条の4(第53条)では、食品用器具や容器包装がポジティブリスト制度に適合していることを示すために、使用材料がポジティブリストに適合しているもののみであることを販売先へ説明する必要があるとしています。
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度における経過措置とは?
ポジティブリスト制度の導入にあたって、すべての事業者がすぐに対応することが難しいことを踏まえ、経過措置期間(2020年(令和2年)6月1日〜2025年(令和7年)5月31日)が設けられました。
この経過措置により、制度施行前(2020年6月1日以前)に製造されたものはポジティブリスト対象外となります。また、経過措置期間中に施行日前と同様のものが製造・販売・輸入または営業上使用されている場合は、引き続き販売や営業上の使用が許可されています。
ただし、器具や容器包装となっていない原材料の状態であれば、措置の対象外となる点には注意が必要です。
施行日以降に製造する食品用器具・容器包装に使用実績のない物質を新たに使用する場合も、ポジティブリストへの収載手続きは必須となります。
なお、ポジティブリスト制度に適合したすべり軸受をお探しであれば、こちらのページをご参照ください。
8. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度における軸受の扱い

食品製造現場で使用される軸受は、食品と直接接触する部分が多いため、その材質や使用される化学物質について、ポジティブリスト制度に対応すべく厳格な規制が求められるようになりました。
この章では、ポジティブリスト制度に対応するために、軸受の切り替えが必要となる箇所や適合する軸受の選定について説明します。
軸受の切替が必要な箇所
ポジティブリスト制度では、食品と接触する可能性があるすべての設備に使用される材料が、リストに掲載されている安全な物質である必要があります。したがって、食品と直接接触する、あるいは食品製造ライン上にある軸受は、規制に適合する素材への切り替えが必要です。
例えば、食品包装機やコンベアに使用される軸受は、食品に直接触れるか、あるいはその周辺に配置されることが多いため、使用されている材質がポジティブリストに掲載されているか確認する必要があります。特に、合成樹脂製の軸受の場合、その材料がリストに含まれていない場合は、安全な素材へ変更する対応が求められます。
そこで次に、ポジティブリスト制度に対応した軸受を紹介します。
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度に適合したすべり軸受のご紹介
オイレス工業のすべり軸受の中から、ポジティブリスト制度に適合した製品を厳選してご紹介します。
①オイレス ルーテックF
オイレス ルーテックFは、青色のため破損等が製造ラインに流出しても、視認しやすい色にしています。
また米国FDAのポジティブリストにも適合しています。
②オイレス グライトロンSF
オイレス グライトロンSFは、耐熱、耐薬品性能に優れ、200℃までの高温領域や消毒液を用いる環境でも安心して使用できます。
③オイレス グライトロンF
オイレス グライトロンFは、-200℃~+200℃まで、幅広い温度範囲で使用でき、かつ消毒液を用いる環境下でも安心して使用できます。
④オイレス ファイバーフロンGH
オイレス ファイバーフロンGHは、高荷重でも使用でき、金属軸の代替えも可能です。